図面の正しい見方 その2

家の間取りを考える時、
動線や広さばかりに気を取られがちになるのですが、
周囲の環境も同時に考えなければいけません。

というのも、
砂漠の真ん中にポツンと家を建てるわけじゃなく、
基本的に家に囲まれた環境の中で家を建てるからです。

つまり、家はその土地が持つ環境、
言い換えるなら近隣との兼ね合いを考えながら
間取りを考えるべきだということなのですが、
これを怠ってしまうと、
暮らし面や金銭面においてなんらかの支障が生じることになります。


例えば、南向きの土地では
出来るだけ全ての部屋を南向きでつくるのが一般的ですが、
ここで考えて欲しいのが、
その家で実際暮らした場合どんな風にして暮らすのかです。

まず、リビングは
道を行き交う周囲の人たちから丸見えになってしまうため、
それを防御するためにカーテンが必需品となります。
結果、リビングはまだしも
奥の方に配置されるキッチンにはほとんど光が届かないため、
日中ずっと照明なしではいられないキッチンが出来上がってしまいます。

また、リビングから続くウッドデッキも、
道路を行き交う人たちから常に丸見えの状態となりますが、
さて、こんな場所で落ち着いてバーベキューが楽しめるでしょうか?
リクライニングチェアーに座ってひなたぼっこが出来るでしょうか?
子供たちはまだしも、自分たちも水着になってプールが出来るでしょうか?

このように南向きの土地に建つ家の多くは、
プライバシー性が低くなってしまうのですが、
それと同時に防犯面も悪くなってしまいます。

1つ目の理由が、窓を見ただけで間取りがほぼ完璧に分かってしまうから。
そしてもう1つの理由が、夜、電気がついているかいないかで、
どこに誰がいるのかまで分かってしまうからです。

そんなわけで、
南向きの土地でこのような設計をしてしまった場合、
外構工事に想定外のコストをかけて、
これらを緩和するという方法を取らざるを得なくなります。
目隠し、植栽、塀を強固につくることによって。

それゆえ、計画した予算から大幅にはみ出ないようにするためにも、
また、より暮らしやすい住まいをつくるためにも
そもそも環境を配慮しながら間取りを考えるべきだ、
というわけなんですよね。


日当たりが悪い土地なのに?


そして、この南向きにリビングをつくるという当たり前は、
日当たりが悪い土地でも最悪の状況を引き起こします。
南向きに窓をつくっても前に建つ家によって光が遮断され
窓から充分な光が入ってこないからです。

さらに、この家は
前に建つ家の裏側を見ながら毎日過ごすことになるため、
違う意味でカーテンが必需品となります。
なんせ、勝手口やゴミや給湯器や室外機や汚れた壁を見ながら
過ごさないといけなくなりますからね。

それゆえ、どう考えても日当たりが悪い土地では、
前に建つ家に隣接した場所に
陽光を採り込みたいリビングなどを配置すべきではないんです。

でも現実は、常識に囚われるあまり
そして動線や広さばかりに気を取られるあまり、
こんな状況になってしまっている家がたくさんあります。

なので、家の間取りを見る時は、
その周りの環境を想像しつつ実際その家の中に立ったつもりで、
周りから自分の家がどう見えるのかまで
俯瞰しながら見るようにしていただけたらと思います。

これが出来れば、間取りに対する考え方が少し違ってくるはずですから。
ぜひ参考にして下さい。

図面の正しい見方

プリントアウトされた図面を見るということは、
上から間取りを見下す形で見るということなのですが、
この状態で間取り図と睨めっこをしていると
家のコストが上がりやすくなります。

この視点から図面を眺めていると、
なんだか部屋や収納が狭いような気がしてくるし、
収納に至っては数も足りないような気がしてくるからです。
つまり、それらの不安を解消するために
家の面積が大きくしがちになってしまうというわけです。

収納に至っては、
現時点での自分たちの持ち物を十分に把握出来ていないとなると、
なおのこと「これで大丈夫だろうか?」という不安に
頭の中が支配されてしまうでしょう。


というわけで今回は
図面の正しい見方と言いますか、
「収納」の正しい見方についてお伝えしていきたいと思います。

「とにかく収納はたくさん欲しい」というのが
多くの人に共通した要望ですが、
収納を増やしたとてそれだけで収納力が上がるわけじゃなく、
その一方でコストだけは順調に上がってしまうので、
そんな無駄なことを防止するためにも
ぜひプランへと進む前に知っておいて下さい。


床の広さは重要ではない


収納は「床」の広さだけで分量が決まるわけではなく、
「壁」の広さによっても分量に大きな違いが生じます。

例えば、幅と奥行きがどちらも91cmの収納と
幅が2倍で奥行きが半分の182cm×45.5cmの収納は
床の広さは全く同じですが、そこに置ける分量は
棚の枚数が同じ場合、単純に2倍違います。

布団以外の荷物はほぼ全てと言っていいぐらい
そんなに深い奥行きを必要としません。

もちろん、奥行きが深い収納も
前後2列に陳列すれば2倍の収納力にはなるのですが、
ここで問題になってくるのが、
前後2列に並べて荷物を置かないといけない収納は
使いやすいのかということです。

奥の荷物を取り出すために
わざわざ手前の荷物を一旦退けないといけないし、
この置き方をしていると、
奥に何を置いているのか分からなくなりやすいでしょう。

そんなわけで、収納は管理しやすくつくるというのが鉄則であり、
そのためには奥行きよりも棚の長さに重点を置いて考えるべきなのですが、
コストを無駄に上げることなくそれを実現する最良の方法が、
「壁」の数を最大化するということなんです。

なので、図面を見る時は収納が一体どれだけの広さなのかではなく、
一体どれだけの壁があるのかに着眼していただけたらと思います。


回遊動線のメリットとデメリット


また、収納の分量が気になる方がやらない方がいいのが回遊動線です。
玄関からリビングダイニングキッチンに直接行けると同時に、
収納~脱衣~洗面を通してリビングダイニングキッチンに行けるようにした
いわゆるグルグルと家の中が回れる動線のことです。

理由は、収納を通り抜けることが出来るということは、
イコール収納の中に通路が出来てしまうからです。

つまり、収納の中の壁量がそれだけでガクンと減ってしまい、
通り抜け出来ない場合の半分以下の収納力になってしまうということです。
その上、ドアの数が1枚増えるし、スイッチの数も1つ増えるため、
コストは上がってしまいます。

洗面や脱衣に関しても、
通り抜けにすれば入り口が2ヶ所になってしまうため、
ドアとドアがかち合う可能性が高くなり使いにくくなるかもしれないし、
これを避けようとしたら余分な廊下を増やさざるを得なくなり、
無駄にコストが上がってしまうだけです。

なので、インスタや見学会などで回遊動線や通り抜け動線を見て、
その利便性の良さに憧れを抱くかもしれませんが、
「陽」の部分だけじゃなくその裏に隠れた「陰」の部分にも
目を向けられるようにしておいてもらえたらと思います。

この見方が出来るようになれば、
収納に対する不安を解消するために
無駄に収納を広げる必要がないことが分かるし、
他の部分にも応用すれば、
無駄なコストをガンガン削ることが出来るようになるので、
ぜひ覚えておいて下さい!

快適な室内に欠かせない3つの工夫

家の中の急激な温度差によって
血圧が大きく変動することで心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことを
「ヒートショック」と言いますが、
これによって命を失う方の数は交通事故の3倍以上だと言われています。

実際、今でも一軒家で暮らす多くの家庭が、
冬にお風呂に入るとなれば極寒の脱衣室でブルブル震えながら服を脱ぎ、
一目散で暖かい湯船に飛び込み冷えた体を温めていると思いますが、
これから家を建てるあなたは、
そんな暮らしとは無縁の快適な暮らしを送りたいですよね?


では今回は、そんな快適な住まいをつくるためには
どうしたらいいのかについてお伝えしていきたいと思います。

3つあるのですが、
お施主様の理解なしでは3つ全てを網羅出来ないので、
ぜひこの機会に覚えておいていただければ幸いです。


家の断熱性と気密性を強化する!


快適な住まいをつくる上で
まず基本となるのが断熱と気密の強化です。

断熱を強化する理由は、
外気の影響を受けにくくするためです。
暑い夏は外から入ってくる熱を防ぐことで、
寒い冬は外から入ってくる冷気を防ぐこと、
という感じでしょうか。

そして、気密を強化する理由は、
空気が外へ逃げていくのを防ぐためです。
暑い夏は冷房で冷えた空気を外に逃さないことで、
寒い冬は暖房で暖まった空気を外に逃さないこと、
という感じでしょうか。

この2つを強化すれば、家全体に空気が流れやすくなり
家の中の温度差を最小化出来るため、
昔の家のように脱衣や風呂が激寒になることも激暑になることもない、
というわけです。

今やこれらは当たり前となっているのですが、
とはいえ、実際はこれだけでは充分だとは言えなくて、
これに付加して間取り面でも工夫が必要となります。


廊下をなくす!


まず、1つ目の間取りの工夫がこれです。
廊下が出来ると廊下が空気を遮断してしまうし、
実際、昔のお家が寒かったのは、断熱と気密の悪さもありますが、
それと同時に無駄に廊下がたくさんあったからです。
言い換えるなら、廊下が断熱材的な役割を果たしていたというわけです。

廊下に通じるドアを開けっ放しにしていたら、
なんとなく空気が逃げているような気がしてしまうため、
反射的に閉めてしまいます。
ゆえ、断熱と気密の強化と共に廊下をなくす設計をすることも、
快適な住まいをつくるためには欠かせない要素だというわけです。

廊下をなくせばその分床面積が小さくなり家のコストを抑えられるし、
ドアの本数やスイッチの数も減らすことが出来るので
さらにコストカット出来ます。

また、空気の分断を防ぐためには、
平屋が建てられるのであれば2階建てではなく平屋にすべきです。
2階建てになれば、階段によって上下階の空気が分断されてしまうからです。
かつ、2階建ての場合、廊下も多く出来やすいからです。

以上のような理由から、
弊社では「廊下のない平屋」を提案の基本としているわけです。


水回りも日が当たる場所に!



そしてもう1つの間取りの工夫がこれです。
ほとんどのお家が脱衣場やお風呂を北に配置しているのですが、
これこそが脱衣場やお風呂を寒くしている最大の原因ではないでしょうか。

最近は、共働きが常識化していることもあってか、
室内干しをしたいという奥さんが急激に増えています。

そんなわけで、基本的には日光が射し込む場所に
洗面や脱衣場をつくるようにしているのですが、
こうすることによって水回り特有のジメジメ感もなくなり、
カラッとした状態を保ちやすくなるし、
明るくて清々しい場所で身支度することも出来ます。

カラッとした脱衣になれば、
脱衣室にフェイスタオルやバスタオルはもちろん、
下着やちょっとした着替えまで置けるようになります。

いかがでしたか?
間取り面での2つの工夫は意外だったかもしれませんが、
「言われてみると確かにそうだなー」という感じじゃありませんか?

というわけで、若干非常識ではあるかもしれませんが、
より快適な住まいにするためにはこんな方法もあるんだよ、
ということをぜひ覚えておいていただけたらと思います。